安全配慮

合気道の稽古での怪我や事故は少ないですが、皆無ではありません。
スポーツ安全保険の適用件数の統計では、事故発生率が柔道・空手より低く、剣道・少林寺拳法より高くなっています。
(平均を上回る空手を除いた武道の事故発生率は、テニスよりも低く、水泳より高い。)
次のようなことに気をつけて稽古をし、怪我や事故を起こさないようにしましょう。

  • 頭部打撲、激突防止(投げる方向を統一する。稽古密度によって稽古方法を変える。)
  • 極め技はゆっくりと施し、手で畳を叩いて痛いという合図があったらすぐに緩める。
  • 準備体操を入念に行い、アキレス腱や踵などの筋や関節をよく動かしてストレッチしておく。
  • 前に倒れて腕の骨や鎖骨を折らないように、腕をしっかり張って前受身を取る。
    仰向けに倒れて頭を打たないように、自分からしゃがみこむようにして後受身を取る。
  • 手首や肘、肩を傷めている場合、傷めている腕で稽古をしない。
    また、リストバンド等を付けて相手に傷めていることが分かるようにする。
  • 稽古時間外に怪我をすることがあるので、休み時間中にふざけ合ったりしない。

(参考サイト)

脳の保護構造

人間の脳の重さは1,100~1,600 gあります。
この脳の固さは豆腐ぐらいのもので、非常に柔らかく壊れやすいものです。
そのために、種々の構造により厳重に保護されています。
最外側には頭皮と頭蓋骨があり、その直下に硬膜、その下にくも膜と軟膜があり、これらの組織に包まれて脳が存在しています。
更に、くも膜の内側には脳脊髄液が流れています。
したがって、ちょうど脳は水の中に浮いた豆腐のようなものとイメージしてもよいでしょう。
硬膜、くも膜、軟膜を合わせて脳髄膜と呼んでいます。

すなわち、脳を直接包んでいるのが軟膜で、軟膜は脳に密着しており、肉眼的には見えないくらい薄いものです。
この軟膜は大脳をラップの様に優しく包んでいます。
その上のくも膜の下には蜘蛛の網のようにネットが張り巡らされて、脳脊髄液という緩衝液が脳から脊髄を守るために流れています。
そして、くも膜の上には厚さが1 mmぐらいの強くてタフな繊維性の硬膜が守るように付いていて、 すぐ上の頭蓋骨にくっ付いているといった構造になっています。

急性硬膜下血腫

スノーボードの転倒やボクシングのアッパーカットによる頭部打撲によって、急性硬膜下血腫による死亡事故、後遺症事故が後を断ちません。
数は少ないですが合気道においても同様の事故が発生しています。
報告により幅がありますが、急性硬膜下血腫による死亡率は57~90%で、命が助かっても植物人間になる確率が非常に高く、恐いものです。

最近の研究で、この急性硬膜下血腫は頭部に直線的な加速度による衝撃を加えるよりも、回転方向の加速度を加えることによって発生することが知られるようになりました。
この発生メカニズムは、スノーボードの転倒や合気道の投げによって頭部に加えられた回転が、柔らかい雪や畳に打ちつけられることにより急激に減速され、 頭蓋骨と一緒に回転が止まる硬膜と慣性モーメントによって脳と一緒に回転し続けるくも膜との間でズレが生じることによるものです。
すなわち、この時に硬膜とくも膜を架橋している静脈が伸長されて破綻(断裂)し、硬膜下腔で出血するために発生するものです。
ボクシングのアッパーカットの場合は、逆に静止し続けようとするくも膜(脳)と回転加速度を加えられた硬膜(頭蓋骨)との間のズレが原因になっています。 柔らかい畳だからと安心できないことを認識する必要があります。

硬膜下腔に生じた血腫(血の塊)が、脳を圧迫するため、頭痛、吐き気、手足のしびれ、眩暈(めまい)などを経て意識を消失したり、いびきをかいて昏睡状態に陥ったりします。
普通は、頭を打ってから数分、数時間あるいは数日と時間が経ってから発現しますが、激しい場合は、受傷直後から意識消失に至ることもあります。
頭部の回転加速度の強弱、作用する時間、あるいは与える衝撃の回数などの因子により、脳に与えられた衝撃がある一定のレベルに達すると脳振盪が発生し、 更に強い条件で硬膜下血腫へと発展していくという実験デ-タが得られています。

合気道でも、大学で新入部員が後方反復受身の単独練習を行っていて、何百回となく繰り返すうちに自分で後頭部を畳に何度も打って急性硬膜下血腫になった例がありますので、 決して強い打撲でなくても頭を打つことは避ける必要があります。
意識消失や昏睡状態になった時は、脳の圧迫が進んでいて、脳の組織が壊死してしまうので、手術で血腫を除去しても命が助からないか予後不良になります。
100 mlを超える出血があると死亡するといわれています。
なお、この架橋静脈の破綻は、後頭部を打撃したときには、架橋静脈の伸長度合いの大きい側頭葉や前頭葉に発生します。

急性硬膜下血腫による症状

脳振盪の場合は、架橋静脈の破綻がなく、脳が揺り動かされるために起こる一過性の意識障害(失神)や記憶喪失(事故に遭ったことを憶えていない)を引き起こします。
急性硬膜下血腫の場合は、次のような症状が発現します。
出血量が少ない急性硬膜下血腫の初期は、これらの症状がまったく発現していないことがありますが、CTスキャンやMRIで診断すると確認できます。

  • 一定時間意識を取り戻さない、あるいは取り戻すこともある
  • 受傷直後の意識障害から一部回復したり、一旦回復してもふたたび意識が悪化する (専門用語では意識半清明期)
  • 昏睡状態(いびきをかく)
  • 嗜眠(しみん)状態(強い刺激を与えないと覚醒し反応しない)
  • 頭痛
  • 眩暈(めまい)
  • 吐き気、嘔吐
  • 視力減退、視力喪失(失明)
  • 目が眼窩に引っ込む(眼球陥入症)
  • 片目(片側)のみの眼瞼下垂
  • 感覚の低下またはしびれ
  • 下肢(右脚又は左脚)又は上肢(右腕又は左腕)の感覚麻痺またはしびれ
  • 顔(顔の右側又は顔の左側)の感覚麻痺またはしびれ
  • 受傷者が感じる能力が減退したことを自覚する(感覚欠落)
  • 感覚が減退した側は周囲に対し不注意になる
  • 運動の喪失(麻痺)、ふらつき
  • 身体の片側だけの麻痺
  • 患者が運動障害を自覚する(運動欠落)
  • 錯乱、せんもう(軽度ないし中度の意識混濁があり、妄覚と精神的な興奮を伴う状態)
  • 人格の変化
  • 興奮性
  • 無関心
  • 記憶減退
  • 思考過程が遅い
  • 会話または言語の障害
  • 読む能力を喪失するが、まだ会話を理解することはできる
  • 言葉を反復することができない
  • 不明瞭言語(構音障害)
  • 言葉を話す筋肉を使うことができないが、筋肉は麻痺していない
  • 発語がない、無言
  • 物の名前を言う能力の障害(名辞失語症)
  • 話された言葉の理解ができない
  • 社会的な交流からの離脱
  • 額の片側の発汗がない

急性硬膜下血腫発生後の処置

急性硬膜下血腫は比較的速く進行します。頭蓋内出血による頭蓋内圧(脳の圧迫)の急激な上昇は制御できないので、 迅速な治療を施しても死亡率が高いものです。
とにかく急いで救急車の手配をします。
意識障害に至らなくても、次のような症状が見られたら緊急を要します。

  • てんかん発作
  • 呼吸障害
  • 目、不同瞳孔(片方の瞳孔が大きい)
  • 脱力感
  • 麻痺-完全または一部(身体の片側または両側)
  • 感覚の変化、身体の一部
  • 発語困難
  • 嚥下障害
  • 視力の変化
  • 眼疼痛

幸いにして命が助かっても、植物人間状態になったり、てんかん発作のような症状が治療後数ヶ月以上も持続することがあります。
てんかん発作は、外傷を受けてから2年もたってから始まることもあります。
軽度の場合でも、大人の場合、やや回復するのに約6ヶ月、ほとんど回復するまでには約2年かかります。
回復が不完全だと、持続的な脳損傷が残ります。

事故を避けるために

急性硬膜下血腫は、いったん頭部外傷が起こると止められないことがあります。
事故を起こさないためには、何よりも相手の頭を程度の強弱に関わらず打たせないように細心の注意を払うことです。
頚部損傷も同様です。
過去に事故を起こした人は、人の命や将来の可能性を奪った悔悟の念に苛まれているばかりでなく、 それが大学なら、大学の部を休部に追い込み、大学、師範などを裁判に巻き込み 、部員やOB会を損害賠償に奔走させるような事態を招いています。
そのため、軽度でも受けの人が頭を打った場合、投げが例え先輩であっても気兼ねせずすぐに申し出て、 稽古を休んで、経過を観察して下さい(受傷後6時間~12時間たってから発症することもありますので、 稽古の後も下宿で一人にしておかないで下さい。)。
また、稽古の途中で頭痛などの異常を覚えた場合、軽くても頭を打った覚えがあれば(2~3日前のことであっても)、 稽古を続けないで検査を受けて下さい。

急性硬膜下血腫(硬膜外血腫、脳内血腫なども含む)は、受身の際に頭を畳に打ちつけることにより発生しますが、 投げられた他の人の腰や足が頭部に当たる衝突事故によっても起こっています。
道場が過密状態の場合、投げの足元にしゃがみこむような受身をとって、他の人に当たらないようにする他、 次のような練習形式を取って互いの衝突が起こらないように心掛けて下さい。

  1. 道場の混み具合に関係なく、常時、稽古生は各組とも平行に並び、相手をそれぞれ同方向に投げる。
  2. 三人一組のグループに分ける。3番目の人は投げの順番がくるまで、他の二人が技をやっている間、「交通係り」となって、他の組みとの安全な間隔を常に確認する。
  3. 「掛かり稽古」方式にして、取りの前に受けをやる人たちが一列に並ぶ。取りは受けを一人ずつ投げていき、取りは順次交替する。
  4. さらに過密状態の場合は、稽古生を二つのグループに分け、交替で稽古をさせる。

頭部損傷事故の防止

八千代市合気道連盟に、柔道の稽古で指導者に投げられて小学生の子どもさんが急性硬膜下血腫による障害を受けた方から問合せがありました。
このホームページの「安全配慮」に急性硬膜下血腫の危険性を警告していたからです。

2011年に柔道事故に関するテレビ報道がありました。
この中で、専門医が「頭を打たなくても大きく揺すぶることによって(加速損傷により架橋静脈が切れて)出血するということが実際はある。
おそらく指導者の方は、知っている人はほとんどいないと思いますネ」と話しています。
柔道と同じ畳の上で稽古する合気道も、稽古の時に一番気をつけなければならないのは頭部損傷事故で、絶対に起こしてはなりません。

そのためには過度と思うほど強く投げなくても事故が起こっているということを認識することが第一だと思います。
テレビでは受身の練習時間をもっと長くするというような対策方法が示されていますが、1日の練習の中で100回も200回も受身を繰り返すことには危険性が潜んでいます。
過去に後ろ受身の単独練習を何百回も繰り返している間に、何度も軽く頭を打って急性硬膜下血腫事故を招いた例があります(脳振盪も繰り返すと脳の架橋静脈が切れます)。
赤ん坊の「揺さぶれっこ症候群」も加速損傷によるものです。

日本の柔道の死亡事故の7割は急性硬膜下血腫ですが、フランスなどではまったく事故を起こしていません。
フランスは「一番大切なのはレベルの高い指導者です」と言っていますが、激突事故にも気をつけなければなりませんので、 稽古をしていてヒヤリとしたことハッとしたことがあれば指導者にお知らせ下さい。
皆でヒヤリハットを共有して危険予知をして行きたいと思います。

加速損傷の防止

合気道の技は取りと受けの二人で作り上げるものです。
稽古では、相手が受身を取れる能力の80%位に加減して投げるというような気配りを忘れないようにして下さい。

また、頭を打たなくても加速損傷は起きています。
相手が怖いと感じる程の、相手がどう受身を取ったら良いのか予測できない技や急激に脳に回転がかかる技を掛けなくても、 効果的な稽古はできるはずです。
演武で脳振盪を起すような技を掛けている高段者がたまに見受けられますが、 倒れた人が救急車で運ばれているという事実にも目を注いで、決して真似をしないで下さい。

「安全第一」を肝に銘じて、稽古が終わった時に「今日は稽古に来て良かった」と感じられる会にしましょう。

脳振盪事故、その予防と対応

脳振盪とは?

  1. 頭部打撲直後から出現する神経機能障害であり、かつそれが一過性で完全に受傷前の状態に回復するものをいう。
  2. 脳振盪で起こる可逆性神経障害の詳細な機序はいまだ明らかになっていない。
  3. 脳振盪を繰り返すと神経細胞が死に、神経細胞は再生しないので、脳機能障害を引き起こす。
脳振盪の症状

意識消失:失神、気絶、意識喪失
失見当識:時間や方向感覚が失われること。
自分の名前は覚えていても直前の記憶が飛ぶので、「今、誰と稽古をしていたの?」とか「何の技で投げられたの?」 という質問に答えられない。

【セカンド・インパクト症候群(セカンド・インパクト・シンドローム)】

最初の脳振盪で受けた損傷が回復しない内に2度目の脳振盪を起こして重症化すること。
2度目の脳振盪を起こすと50%の人が急性硬膜下血腫で死亡し、助かってもほぼ全数に障害が残る。

【脳振盪の予防と対応 - 八千代市合気道連盟のルール】

  • 頭を打たない、打たせない。 軽くても打ったらすぐに申し出ていったん休み、症状を観察する。
  • 受けがどのように受身を取ったら良いか予測できる間を与える。
    力を入れてなくても切れの良い技は受けが方向を予測できないことがあるので、投げは受身を取らせるよう(取れるよう)に投げる。
  • 頭を打たなくても「加速損傷」による急性硬膜下血腫が起こっているので、急激に速く投げない。
  • 受身に必要な畳の面積が柔道より広いので、投げる方向を統一し、隣で受身を取った人との激突防止に配慮する。
  • 脳振盪を起こし、記憶が飛んでいたら救急車を呼ぶ。 頭痛などがする間は絶対練習をしない。

(全国柔道事故被害者の会 第4回シンポジウム資料を引用)

関節の故障、その予防と対応

合気道の稽古に限らず、武道の稽古は、特に上級者が手加減をすることが大切です。
剣道では「引き立て稽古(指導的立場で稽古をするとき、相手にわからないように上手に打たせて下位者にうまく打てたことへの喜びを味わわせたり、 打突の機会を修得させたりするための稽古法です。
これを繰り返し行うことで、下位者の技量が上がってきます)」という指導法があります。
相手を強くしてやろうと思って強い技を掛けるのでは、相手を引き立てることになりません。
「自分はただ自分の稽古になればよいので、人の稽古になろうなどとは思っていない。だから、相手が初心者でもわざと打たせたりはしないのだ」(高柳又四郎)と思っている人の所には、 誰も寄ってこなくなります。
「手加減上手は合気道上手」と思って、手加減をして下さい。
「自分に優しく、人にはもっと優しく」「相手に怪我をさせてはなりません。怪我とは我が怪しいと書くのです」とも戒められています

手首関節

片手取り、両手取り、諸手取りで相手の手首を持つ場合、写真の赤丸印を付けた部分(手首関節部)を握ると、 知らず知らずのうちに手首関節が炎症を起こして痛くなるので、必ず、写真でサポーターを付けている手首部分を握るようにしなければなりません。
手首のくるぶし(親指側:橈骨茎状突起、小指側:尺骨茎状突起)から手に近い方の部分を握られていると、いつまでたっても痛みが取れないので、合気道の稽古が続けられなくなります。

手首関節

これは、小手返しで極める際も同じで、本来、手首関節を極限まで極めて痛みを与える技でないので、関節の曲がる方向に適度に曲げて投げるようにして下さい。
『合氣道技法』(植芝盛平監修、植芝吉祥丸著)の小手返しの説明には、

「合気道の鍛錬は、体を強靱にすることが一つの目的である。 それには無理のない自然の錬磨が必要である。 もし不自然な錬磨を重ねたならば、やがて身体各部に目に見えない悪影響を及ぼし、知らず知らずのうちに身体を損なうことになろう。 合気道がそうしたものでないことは、前々から力説している通りである」

と注意が明確に述べられています。

肘関節、肩関節

四方投げで肘を伸ばして受身を取ると、肘関節を捻って傷めるので、必ず、投げる人が、受けの手首を肩に付けてから投げて下さい。
第二教、第三教の極めや固めも、技を施す人は少し緩めに、受ける人は少し早めに動いて、痛くなる前に手を叩いて下さい。痛いのを我慢しても、腱や靱帯はほとんど伸びないので、 ストレッチすれば伸びるようになると勘違いして辛抱してはなりません。
また、少し痛い時には、痛い方の腕で極め技、固め技をしないことです。
無理を続けていると炎症が酷くなって、やがて夜も眠られない程の痛みになります。
そうすると、稽古どころか仕事もできなくなります。
十字絡みや肘極めも同様です。
私は、さる高名な先生に十字絡みで投げられようとした時、一瞬、どう飛んで良いか迷いました。
そうしたら、とっさに先生の投げの手が緩みました。
それで、逆にこの先生は凄い使い手だということが分かりました。

膝関節

合気道の稽古で膝関節を極めるようなことは、通常、行いません。
それでも膝関節が痛くなるのは、受身の時に、毎回、膝が畳につくからです。
この時の衝撃を和らげ、膝痛になることを予防するために膝サポーターを付けることをお奨めしています。
変形性膝関節症で痛くなることもあります。そのようなときには、サプリメントで軟骨成分を補うと良いようです。
成分としては、コンドロイチン、グルコサミン、ヒアルロン酸が必要だといわれています。
なお、年配者、高齢者は、座技や畳に抑えつけられるような稽古は、少なめにした方が良いと思います。

仙腸関節、股関節(腰痛)

合気道を続けていて体を動かしているから腰痛とは無縁だとか、無理に腰を捻っていないから腰痛は起こらないということはありません。
合気道の技で、腰に良くないというものもありません。
腰痛の85%は原因が分からないそうですが、諦めていては好きな稽古が続けられません。
幸い、腰痛の85~90%に効果があるという療法が、認定された整形外科医で受けられます。
AKA博田法という手技療法ですが、認定医が近くにあれば試してみると良いと思います。
ぎっくり腰、脊柱管狭窄症などに顕著な効果がありました。
それ程重くないときには、立って腰に手を当てて軽く会釈程度前屈し(仙腸関節が緩む)、天井が見える程度に後ろに反る「前屈・後屈体操」を3回、30分間隔で行うだけで、 徐々に腰が軽くなってきます。

アキレス腱、足関節

稽古中に足首を捻挫したり、アキレス腱を切ることがあります。
合気体操(準備体操)で、足首の関節運動、アキレス腱のストレッチ体操を行ってから稽古に入ることで、ほとんど防げると思います。
腱はストレッチしても柔らかく伸びるようになる訳ではないので、まず足首の関節運動をして、筋肉を温めておいてからストレッチをするという順序で行うのが良いと思います。

熱中症の予防

熱中症は熱射病(日射病)だけではありません。
熱中症とは、暑さによって生じる障害の総称で、熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射病などの病型があります。
屋内でも熱中症になりますので、長時間、高温多湿環境での稽古を続けないよう注意し、こまめに水分や塩分の補給を忘れないようにしましょう。
水分の補給だけでは血液中の塩分濃度が低下しますので、スポーツドリンクでの水分・塩分補給をお薦めします。
乳幼児や高齢者、不眠・疲労・脱水・基礎疾患(高血圧、糖尿病、心疾患、アルコール中毒、貧血、甲状腺疾患、慢性閉塞性肺疾患など)がある人では、熱中症が発生しやすくなります。

(公財)日本体育協会の資料から抜粋して、病型、救急処置などを示します。また、事故事例も示します。

熱中症の病型

(1)熱失神

炎天下にじっと立っていたり、立ち上がったりした時、運動後などにおこります。
皮膚血管の拡張と下肢への血液貯留のために血圧が低下、脳血流が減少しておこるもので、めまいや失神(一過性の意識消失)などの症状がみられます。
足を高くして寝かせると通常はすぐに回復します。

(2)熱疲労

発汗による脱水と皮膚血管の拡張による循環不全の状態であり、脱力感、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などの症状がみられます。
スポーツドリンクなどで水分と塩分を補給することにより通常は回復します。
嘔吐などにより水が飲めない場合には、点滴などの医療処置が必要です。

(3)熱けいれん

汗には塩分も含まれています。
大量に汗をかき、水だけ(あるいは塩分の少ない水)を補給して血液中の塩分濃度が低下したときにおこるもので、 痛みをともなう筋けいれん(こむら返りのような状態)がみられます。下肢の筋だけでなく上肢や腹筋などにもおこります。
生理食塩水(0.9%食塩水)など濃い目の食塩水の補給や点滴により通常は回復します。

(4)熱射病(日射病)

過度に体温が上昇(40℃以上)して、脳機能に異常をきたし、体温調節が破綻した状態です。
種々の程度の意識障害がみられ、応答が鈍い、言動がおかしいといった状態から進行するとこん睡状態になります。
高体温が持続すると脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓などの多臓器障害を併発し、死亡率が高くなります。
死の危険のある緊急事態であり、救命できるかどうかは、いかに早く体温を下げられるかにかかっています。
救急車を要請し、速やかに冷却処置を開始します。

救急処置

暑い時期の運動中に熱中症が疑われるような症状が見られた場合、まず、重症な病型である熱射病かどうかを判断する必要があります。
熱射病の特徴は高体温(直腸温度40℃以上)と意識障害であり、応答が鈍い、言動がおかしいなど少しでも意識障害がみられる場合には熱射病を疑い、 救急車を要請し、涼しいところに運び、速やかに身体冷却を行います。
意識が正常な場合には涼しい場所に移し、衣服をゆるめて寝かせ、スポーツドリンクなどで水分と塩分の補給を行います。
また、うちわなどで扇ぐのもよいでしょう。
吐き気などで水分が補給できない場合には、医療機関へ搬送し、点滴などの治療が必要です。
大量に汗をかいたにもかかわらず、水だけしか補給していない状況で、熱けいれんが疑われる場合には、 スポーツドリンクに塩を足したものや、生理食塩水(0.9%食塩水)など濃い目の食塩水で水分と塩分を補給します。
このような処置をしても症状が改善しない場合には、医療機関に搬送します。
症状が改善した場合は少なくとも翌日までは経過観察が必要です。
長時間、高温多湿環境にさらされることが熱中症の原因です。
乳幼児や高齢者、不眠・疲労・脱水・基礎疾患(高血圧、糖尿病、心疾患、アルコール中毒、貧血、甲状腺疾患、慢性閉塞性肺疾患など)がある人では、熱中症が発生しやすくなります。

熱射病が疑われる場合の身体冷却法

現場での身体冷却法としては氷水に浸して冷却する方法が最も効果的です。
市民マラソンなどでバスタブが準備でき、医療スタッフが直腸温を測定できるなど、対応できる場合には、氷水につける方法が推奨されます。
一般のスポーツ現場では水をかけたり、ぬれたタオルを当てたりして扇風機などで強力に扇ぐ方法が推奨されます。
タオルをいくつか用意し、氷水につけて冷やしたものを交互に使うのもよいでしょう。
氷やアイスパックなどを頚、腋の下、脚の付け根など太い血管に当てて冷やすのを追加的に行うのもよいでしょう。
現場で可能な方法を組み合わせて冷却を開始し、救急隊の到着を待ってください。

熱中症による事故事例(屋内)

(独立行政法人日本スポーツ振興センター学校安全web学校事故事例検索データベースから)

●運動部活動(バスケットボール) 中学校2年男子
当日、本生徒は体育館(3階)において、バスケットボール部の練習を行っていた。
4階ギャラリーを数周走り、3分間のゲームを30分ほど行った。
その後、本生徒はタイムキーパーの仕事をしていたが、具合が悪いと言って交代し、水を飲んだところ嘔吐してしゃがみこんだ。
顧問教諭が気付き、他の生徒に涼しいところに移動させるよう指示したが、約5分後、名前を呼んでも返事をしないと連絡があり、状況を確認後、すぐに母親に連絡を取った。
数回嘔吐したので、嘔吐物が喉に詰まらないようにし、母親到着後、母親の車で医療機関へ搬送した。
医療機関では、脱水症状で重い意識障害のある熱中症と診断され、集中治療室で治療が行われたが、後日死亡した。
● 運動部活動(バスケットボール)  中学校2年男子
体育館で2時間に渡ってランニング11周、ストレッチ体操、腕立て伏せ、腹筋・背筋20回×3セット、フットワーク、コースチェック、ドリブル、ダッシュ等の練習が行われ、 途中で5~10分の給水のための休憩を2回行った。
練習終了後に片付けを終えて自分の荷物を取って体育館へ向かった時に、よろめいて床に倒れこんだ。
応急手当と並行して救急車を要請し、病院へ搬送したが意識を回復することなく、後日死亡した。
●運動部活動(柔道) 高等学校2年男子
強化合宿に2日間の予定で参加していた。
2日目、約50分間程度行われていた早朝トレーニングでジョギング等をした後に宿泊棟の階段付近で倒れているところを発見された。
病院に搬送し処置を行うものの、人工透析のできる病院へ搬送し集中治療室で治療を続けたが、症状が回復することなく、後日死亡した。
●運動部活動(剣道) 高等学校1年男子
合宿中に、剣道場でかかり稽古をしていた本生徒は練習が終了し、正座のまま防具を外した後に横に倒れた。
反応が鈍く、すぐに防具を外し稽古着を緩めて、氷で脇下と首の後ろを冷やし頬を叩きながら呼びかけ続けた。
冷房のある部屋に運び、同様の処置を続けたが、意識がはっきりしないので、救急車を要請し、病院に搬送したが、同日死亡した。
参考
公益財団法人日本体育協会「熱中症を防ごう」

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